No Real :in the headphone

Washer1

 僕の部屋にある洗濯機が、別の世界に繋がっているなんて、きっと誰も思わないだろう。でも実際に、僕はその洗濯機から出てきた少女と話をし、僕自身も行ったのだ。それはごく短い時間ではあったけれど。

 その洗濯機について、もう少し詳しく書こうと思う。その洗濯機はもうそろそろ十数年使われている。黒く、大きい。ひとたび洗濯物を飲み込んで回りだせば、ものすごい音を立てる。これでも一応全自動なのだ。その洗濯機は全自動であることと、優しい愛妻号であることだけに誇りを持っている、と僕は思う。つまり省電力でもなければ節水でもない。ましてや低騒音なんてもってのほか。その洗濯機は騒音が唯一の自己表現。という感じ。

 僕の部屋の洗濯機についてごちゃごちゃと書いたけれど、結局、それらと別の世界への繋がりとはあまり関係ないのだと思う。おそらく、その洗濯機の色が白だろうがピンクだろうが、あるいは殆ど音を出さないうえに省エネなタイプであろうが、きっと別の世界に繋がっていたのだと思う。二層式は解らないけれど。

 とにかく、その洗濯機から、少女はでてきた。彼女は学校から帰ってきたら既にいた。だから僕は直接的には彼女が洗濯機から出てきたところを見ていない。じゃあ何故洗濯機からでてきたと言えるのか。簡単だ。彼女がそう言ったから。そして僕自身も洗濯機を使って別の世界へ行ったからだ。

 僕が部屋の鍵をあけ、自分の部屋に入ったとき、彼女は洗濯機によりかかって本を読んでいた。

Summer *Autumn Winter

 ぼーっとしていたら、コーヒーがすごく濃くなってしまった。捨てるのはもったいないから、砂糖を多めにいれて飲む。

 ばかみたいに濃くて甘いコーヒーを飲んだら、なぜか眠くなってしまった。おかしいなぁ。仕方ないから、少し床に寝そべって、天井を見てみる。まぶたは重いのに、頭の中は妙に冴えていて、不思議な気分。

 少し冷静になって、遠くから今の私自身を見てみる。数度目の思考スキャンで、私がとにかく混乱していることに気付く。

 今季節は秋なのに、私は強く春を求めている。だけど、冬が終わったとしても、春が来ないような、そんな気がする。夏と秋と冬がぐるぐるまわって、春が来ない。いつからだろう? いつからだろう。いつからだろう、って考えて、わからないからやめてしまう。今はこなくても、そのうちきっと来るはずだから。

 眼を天井から壁に落とすと四月のカレンダーがめくられずに残っていた。少し見ていると、それは手を伸ばしてきて、私の肺を掴みながら、こう言った。

「二度とお前に春なんて来ない」

 ひどい話だなぁって思って、私は笑う。私は笑う。私は笑う。

Kill me

 ワイヤーフレームな景色が現実感。マイナースケールなギターの空気感。

 二重の思考。

INGHT

 部屋に戻ると、見覚えのない人がいた。いやあるのかもしれない。どうも自信がない。そもそも僕はあまり人の顔を覚えるのが得意じゃないから。

 本を開き座っている少女。僕に気付き、目があう。

「誰?」

 と僕が訊く。

「悪魔だよ」

 と答えて、彼女は唐突に歌いだす。

 そうか、と思った。彼女には見覚えがあった。確かに。何故忘れていたのだろう?

 いや、そんなことはどうでもいいんだ。結局、僕の最初の考えは間違っていなかったから。

Play at Humans

 いつものように、予備校に行って一番の後ろの席に座って、教室を見ていたときに、私は不思議な気持ちになった。

 なんでこの人たちは、こんなに必死なんだろう。なんであの教壇に立っている先生は、答えられなかった生徒を叱っているんだろう。なんで私は、ここにいるんだろう? 私が私じゃなくなって、幽体離脱しているような感じ。なんだろう?

 きっと私たちは人間ごっこをしているんだ。そう思った。人間らしく考えて、人間らしく悩んだり、泣いたり、喜んだりする。人間らしく生きていることに楽しさを抱いてる。悲しいことも楽しんでいる。人間ごっこなんだ。遊びにすぎないんだ……

 遊びなのに、いままで私はそれに気づかずに、つらい気分になったりしたんだ。でも、これからも。

 私はこの遊びをやめる方法を知らない。どうすればやめられるんだろう? いつの間に? 誰に? 誰が?

 そんな、遊びの中で、私は、人間らしく、人間ごっこについて考えるんだ。

Silent Room

 私が独りでいると、決まって誰かが「誰かそこにいるの?」って問いかける。でも、私は返事をしない。私はその誰かが誰なのかを知っているし、なんで呼びかけているのかも知ってる。知らないことなんてない。全部知ってる。

 呼びかけている誰か、なんていないんだ。

 今、部屋には私独りしかいないんだ。

Clear the Head

 秋。雨がふるたびに、空気が冷たくなる。

 秋。雨がふるたびに、空気が透明になる。

 秋。いつのまにか晴れた空を見上げて、私は、すべてを忘れてしまう。

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