No Real :in the headphone

Flying Head

「こんなに晴れてると飛べそうだよね」

「そう?」

「ほら背中に天使の羽がはえてて」

「うん」

「びゅーんって飛ぶの。太陽まで」

「うん」

「飛べそうだよね。晴れてると」

「うん」

「本当に思ってる?」

「ちょっと思い始めた」

「自殺願望あるの?」

Rail to Rain

 幸せな顔をしている人間は、自分が大して幸せでないことを知らない。でもそれがどうしたっていうんだろう……結局、幸せな顔をしている人間は、幸せ者。

 不幸な顔をしている人間は、自分が大して不幸でないことを知らない。でもそれがどうしたっていうんだろう……結局、不幸な顔をしている人間は、不幸者。

 私がいつも考えること。不幸な顔をしたくてしているんじゃないなんてこと。どうしてこうなったのか、私はいくら考えてもわからない。窓の外はただ怖いことだらけで、もういっそ、このまま死にたいと、何度思ったかな? 死ぬ気になればなんでもできるなんて、誰が言いはじめたのかな。きっと、私が死ぬ気になってやることは、最初で最後に、死ぬことなんじゃないだろうか。

 窓では、冷えた水滴が、周りの水滴とくっついた。大きなかたまりになった水滴は、窓を、滑り落ちる。私はそれをじっと見ていた。

In the Black Hole

 鎖骨を辿って、少し凹み始める部分だ。そこの近く、身体の内部にはブラックホールがあり、無限にものを飲み込み続ける。ブラックホール周辺には、既になにも残されてはいない。それは、ぐるぐると、少しづつものを吸い込み、成長する。

 僕が生まれたときからそれはあるんだろう。そしてまた、僕の希望も生まれたときには無限にあったはずだ。

 失くした何かを取り戻そうとすると、ブラックホールに引きずり込まれてしまうだろう。ただ何もない闇の中で、僕は暮らせるだろうか。僕が今まで育てた孤独は、それほど靭いだろうか。

I want you

 探し物をしていたら、かつて僕が壊してしまったおもちゃがでてきた。それは単純な図形がいくつか組み合わさっただけの人形であったけれど、僕ができれば見たくないものの一つだった。

 僕はその人形を親にせがみ買ってもらった。そして買ってもらったその日に壊したのだ。僕は一通り泣いた後、できるだけ僕の目に付かないところにしまった。捨てることは絶対にしてはいけない気がしたし、それでも、その壊れた人形の痛々しい姿を見て入られなかったから。親は当然そのことを知っていたけれど、彼らは何も言わなかった。

 それ以来僕は親になにかをねだるということをしなくなった。さらには自分が欲しいものはできるだけ手に入れないようにしてきた。どうせ手に入れても、壊してしまうときがくる。それは遅かれ早かれ、間違いなく、確実にくる。自分が欲しいものは、手に入れてはいけないものなのだ。

 そういう思考が、突然現れた壊れたおもちゃを見た瞬間に流れ込んできた。そして僕は今、欲しがらないことに慣れてしまっていることに気が付いた。そもそも、欲しいものさえないことに気が付いた。欲しいもの、なんだろう?

 僕はもう、なにもいらない?

Connection Timeout Error

 とても独りになりたい気分になって、散歩に出た。今日はこの時期にしては暖かい日で、少しだけ幸せな気分がする日だった。今、太陽を失った空は少しだけ青い余韻を残して暗くなっている。

 ポケットに手を入れてみると、携帯電話があることに気付く。いつ入れたんだろう? 私の携帯電話は滅多に鳴らない。なぜだかはよくわからない。ただ、携帯電話は携帯電話としてあるだけで、私と何かを繋げてくれたりはしない。本当に鳴らないものだから、充電コードを挿しっ放しにして家に置いたままでかけてしまうことも多い。そのことに気付くのも寝る直前だったり、次の朝だったり。でも、今ここに携帯電話がある。なんでだろう? いつ入れたんだろう? 滅多に鳴らない携帯電話に、どんな意味があるんだろう?

 携帯電話を開いて、時刻を確認してみる。六時十五分。携帯電話は、地面に。私の、足が。

 壊れた携帯電話を見ていたはずの私は、いつのまにか壊れた携帯電話を見ている私を見ていた。私は携帯電話をただずっと見ていて、それ以外の動作を一切していなかった。口も、目も、耳も、手も、足も、もしかしたら肺や心臓さえも全く動いていなかった。ただ私は携帯電話を見る姿勢をしていて、それ以外私には何もなかった。私は私を観察していると、いつのまにか少しずつそれが遠くなっていくことに気付いた。少しずつ少しずつ遠くなっていく。私は目を凝らしても見えないくらいに、遠く。

 そして私を見失った私は、後ろを振り返ってみた。後ろには真っ黒に塗りつぶされた何かがあった。視線を戻すと……そこにも真っ黒に塗りつぶされた何かがあった。辺りを見回しても、真っ黒に塗りつぶされた何かがあるだけだった。

 「これでもう完成!」と私は誰かに叫んで、眼をつぶった。

Surounded by the Stacks

 図書室に入り、一冊の本を手に取った私は、頭に流れている音楽を停止させた。授業中の誰もいない図書室。司書さんさえどこかにいってしまって、空っぽだ。あるもの。空気がゆっくりと動く。まとわりつく。何もない。

 本を開き一ページだけ読むと、私は眼を閉じた。頭の中に音が聞こえる。自分の鼓動だった。普段はまるで聞こえないものなのに、今ははっきりと聴くことができる。誰かが歩いてくるように。歩いてくるのは大男か、兵隊か?

 兵隊たちは私に近づこうとしている。でも絶対に私には届かない。私もまた、彼らには絶対届かない。

 やめよう。

 意識が多少霞んでいる。さっきまで寝ていたからだ。学校に来て、私はいったい何をしているんだろう。

 眼を開けて、ページをめくる。ざらざらとした紙の感触。擦れて音が鳴る。描かれている図形が、書かれている文字に変化していく。

 私は本に集中し、フレームを切り替える。そこで私は私自身の考えをなくす。

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