No Real :in the headphone

Flowers

 道端に咲いている花の名前なんて、私には関係ない。それはただそこで咲いていて、私が綺麗だと思えれば、それでいいのだと思う。私はそれでも花の名前をいくつか知ってしまっているけれど、思いついたときには、自分で、自分だけの名前をつけるようにしてる。

 昨日は珍しく早く起きて、学校へすぐに向った。いつもより人の少ない電車、少し澄んだ空気、少し青い空……いつもより、世界が広く感じた。学校に向う道は遠く広く、太陽は私の眼にしっかり光を届けていて、雲が動いているのを、しっかりと感じていられた。

 道端の咲く花はきっと、毎日、ずっとそこにあったはずだけれど、私がそれに気付いたのは、昨日が初めてだった。ちいさくて青い花で、コンクリートとアスファルトの隙間から、強く生えていた。

 私は少し考えて、その花に名前をつける。もちろんそれは誰にも言わない。つまらなくてもいい、私にだけ特別であればいい。誰かにそれを言う必要なんてないんだ。

Note

 幸せは続かないと君は言うよ。思い出よ……でも

 僕は三年ぶりに立った母校の校門で「さようなら」と言い、心の中では「いままでありがとう」と言った。全ての思い出はもう僕には必要なくなったのだ。久しぶりの校舎は卒業したころよりも小さくなり、桜たちは寂しげにうつむいたまま、僕を見ていた。

 日曜日だったからか校舎には気配がほとんどなかった。校庭にさえ人影がないので、もしかすると試験期間なのかもしれなかった。もう僕はいつにどんなイベントがあったかさえよく覚えちゃいないのだ。それでいい、それでいい。

 そして僕は近くの神社によった。夏になると屋台がならび、たくさんの人がひしめく。でも今はただ冷たい風が吹くだけだ。ビニール袋が風に飛ばされ、煽られて空に舞いあがる。

 終りだ。そして今日あったことを家に帰って話そう……

March Morning

 みんな俺を嫌っている。そうだよ。ずっとそうだったんだ……

 寝る前に、よく考えるよ。そしてあの子が現われる。

「ねぇ、ここのところ、毎日だよね」

 その子は言って、懐しい歌を歌う……俺は眼を濡らして、言葉を待つ。

「もういいから、新しい世界へ行こうか? 十分もらったよ。そろそろ、いいんじゃないかな」

「そうだな……」

 もうなにも思わない、俺は……


 朝の香がする。階下から母がそろそろ起きなさいと声をかけている。母親。母親はずっと昔に死んだんじゃなかったっけ……よくわからない。

 僕は立ちあがり、カーテンをあける。机の上の彫刻刀と、作りかけの飛行機のモデルが使い古された木の机に載っている。窓から光がさしこみ、それらを照す。晴れていて気持ちいい朝だ。

 階段を下り、朝食を食べ、支度をして外にでる。まだいくぶん新しい制服を着て、内容のよくわからない教科書の入った鞄を持って……

 ちょうど隣に住む子がドアをあけて出てきて、おはようと挨拶をする。おはようというときに入る冷たい空気が心地良く、光の粒子が髪をなでる。

「課題はやった?」とその子が言って、そんなものもあったっけと思い出す。そうか、一週間前のあれかな……

 なんだか全てが新鮮に感じる。ずっと前からここにいるはずなのに。おかしいな。夢のせいかな。あれ、どんな夢だったんだっけ……思い出せない。

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