Z
二十歳になった夜、僕は部屋で独りだった。高校の修学旅行で買ってきた沖縄の青いグラスに、近くのスーパーで売っている五百円ぐらいの白ワインを注いで飲んでいた。
去年の誕生日とはワインがあるかないかぐらいの違いしかない。何も変わらない。僕も、僕をとりまく環境も。
少したってから、あらためて物心ついたときからの記憶をなぞってみることにした。
幼稚園のころ。好きだったホウズキの果実や、それで作った風船。冬の日に白鳥を見に行った川原。幼稚園の体育館へ走る自分。そのころ、僕に雨の日はなかった。
小学校のころ。古い校舎が建て直され、旧校舎・プレハブ・新校舎と、二年ごとに環境が変わった。旧校舎のころに見たあじさいはもうない。銀杏の木と、桜の木だけが残った。そういう変化を、無邪気なまま僕は見ていた。少しの友達と、季節と遊びながら。
中学校のころ。一小一中だったので、通う校舎と、着る服と、気持ち以外は何も変わらなかった。誰かが喋る。僕が笑う。僕が喋る。誰かが笑う。
高校。母親が他界し、父親と二人暮らしになった。二人暮らしといっても、父親はあまり家に帰らない人だから、そんな気はしなかった。はっきりしない意識のまま登校する。机で寝る。誰もいない家に帰ってくる。それだけ。
その後僕は誰でも入れるような大学に入った。自分が何もできないことを知り、周りに誰もいないことに気付いた。順調に状況は悪化し、少しづつ、いろんなものを失くしていった。
僕は持っていたものを消費しただけで、何も得ていないことに気付いた。今僕にあるのは、僕以外誰もいない部屋と、雨がふきつける窓、少しのCD。
誕生日に、一人部屋に閉じこもっている人間に、何ができるだろう? 僕はどうしたらよかったんだろう? どこかに分岐点はあったのか? その分岐点で、他の道を選ぶことが可能だったんだろうか?
そこで僕は考えるのをやめて、横になり、眼を閉じる。
- Path
- /in-my-head/ Z
- Date
- 2005-11-06 18:53 Edit
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