Acceleration Device
生まれるとき何かから手を放し、それからずっと周りの景色は加速するばかりで、そのことに気付いたときの私は、流れる景色を止める方法を持っていなくて、呆然としたのでした。加速する景色に置いていかれないようにと走り続けた日々ももう遠く遠くに小さくなって消え、少しずつ悪くなる視力もあってか、それは今全く見えないのです。走り走り、疲れて立ち止まったとき、そのことの無意味さに気付きました。どんどんと加速していく風景に、ずっとついて行けるはずがないのでした。
それから私は走るのをやめました。でもずっと立ち止まっているわけにもいかないので、少し歩いて、少し休憩したりを、繰替えし、繰替えし、進んだりしています。まだまだ景色は加速をし続けていて、その一瞬を見つめることができませんが、もうそれはできないのだと、諦めています。
そして、私は、流れる景色を止める方法、一つだけ知っています。生まれたときに手を放したものを掴みなおし、今ある孤独と未来を手放し、静寂の愛に還ってしまうことです。手を放したものはすぐ、すぐ近くにあったのでした。そしてそれを知ったおかげで、私はなんとか、それはいつでもできるからと、どうにか歩いていけるのです。
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- Date
- 2008-06-14 01:48 Edit
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