No Real :in the headphone

Normal Day in a School

 気がつくと声を発していて、自分でもその自分が発した声の大きさや内容に驚いた。それは僕にとって言うべき言葉ではなかったかもしれない。あるいは僕なんかが声を出さなくても、彼女はその強さで状況を乗り切れたかもしれない。

 その後すぐに僕に対してのそれは始まったけれど、なんだかもうどうでもよかった。彼女は「優しいね」って言ってくれたけど、あれは別に優しさからでたわけじゃない。ただあの空気や、弱い人間が心底嫌になって自然に声がでただけだ。

 彼女はその強さで、みんなと一緒に笑えない。僕はたまたま何度かその笑顔を見た事がある。綺麗だった。ただそう思った。どうして彼らがそれをするのかが僕には本当に理解できなくて、そんな彼らがある意味では本当に恐怖だった。それまで僕は考えれば何だって理解できると思っていたし、実際そうだったから。

 風になびくカーテンと、黒板にチョークがあたる音。重い空気。残像。


 そんな状況だから、僕と彼女は一緒にいる時間がだんだん長くなっていって、昼休みには屋上で、どうでもいい話をそこそこした。無口だと思っていたけれど、彼女は割と饒舌だったし、話はいつも面白かった。だから僕はますます何が問題なのかわからなくなった

 僕自身は、そんなに状況を悲観していなかった。どの視点から考えても、悪いのは彼らであって、僕らではなかったし、僕は世界をそう悪いものだとは思っていなかったから。だから、先生に堂々と事実を告げにいった時に、彼が浮かべた表情を見て、台詞を聴いて、僕は心底気分が悪くなったのだ。

 彼女にそのことを話した時、彼女は笑って「そんなものだよ」って言った。ちょっと冷静さを失っていた僕は、それで落ち着きを取り戻して、なぜだか不思議に納得し、諦めた。でも、状況はむしろ悪くなったように感じられた。助けがあると思っていたのになかったということは、自分たちでやらなければならないことになるからだ。そして彼女はむしろもう完全に諦めていた。「大丈夫」と「ごめん」って言っただけ。でも僕はどうにかしたかった。

 見下ろす世界の空気は、オレンジと青が混ざり、校庭の空気と混ざって濁っていた。


 一緒に楽しめたら、と部屋で考えたこともあったけれど、それができるなら、僕は「ごめん」なんて言われないはずだっただろう。

 結局いつからか彼女とは会えなくなって、それからの行方はわからない。いなくなったと気付いた時から一ヶ月ぐらいの記憶がもうないのだ。何があったのかよくわからない。今も。

 間もなく僕は転校してしまったから、その学校の後の事はわからない。たぶん彼らは今もどこかで生きていて、多かれ少なかれそのときと同じ事をしているのだろう。


 転校先の学校の屋上に一度でたけれど、僕は何も感じなかった。風がゆるくふいて、遠くから雨の臭いがする。それだけだった。

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